主要先進国の乗用車交通と公共交通機関利用の移動距離占有率 事故死者との関係
下の表は、OECDの道路交通事故データーベースIRTADより、各国の、鉄道、バス、乗用車交通の移動距離単位の(Passenger-Kilometers)で表した交通占有率%と形態別事故死者数との関係を集約したものである。値は各国とも1990年から直近までの平均値で表した。

後述するように、韓国、日本、オーストラリア、アメリカは他の西ヨーロッパ諸国と異なる形態が見えるので背景色を変えて表示した。
下のグラフはこの表を対数表示で示したものである。乗用車交通距離占有率を昇順に並べ描いたもので、西ヨーロッパ各国では、国状により、公共交通機関と乗用車交通にわずかな違いが見られるが基本的なベースラインに大きな差異が見られない。

この結果から、下のグラフ群は、西ヨーロッパ諸国の、乗用車、バス、鉄道利用の3形態について、事故死亡数との相関を示したものである。

第一列目から乗用車利用、バス利用、および鉄道利用率に対するそれぞれの形態での事故死亡数と、歩行中、高齢者の死亡数の相関図である。
結果は、どの事故死亡形態でも、乗用車の場合では、利用率が多い国ほど事故死亡率は少なくなる逆相関を示し、バス利用では、利用率が高くなるほど事故死亡率も多くなる正相関を示している。鉄道に関しては殆ど相関は見られない。
その結果、乗用車利用の割合が大きい国ほど総事故死亡率が低くなる傾向が見られる。自動車乗車中が最も安全な交通手段といえる。
一般に信じられていることに反し、公共交通機関利用構成率が大きい国ほど事故死者数が大きくなる。この理由は、路線公共交通機関では、移動目的を満たすには歩行、あるいは自転車交通が伴い、公共交通機関単独では完結しない。言い換えれば、バスや電車乗用だけでは交通目的を達成できない。このことから、公共交通機関利用分析では、歩行や自転車による路上暴露もあわせての総合的なデータベースが必要であるという結論になる。
一般に乗用車走行距離が延びると死亡事故率は減少の傾向があるが“low-mileage bias”、下図のように日本は乗用車走行距離分担率が極端に小さい割に乗車中事故死者率は世界一小さく特異な優秀さであると見える。これも特筆すべき事実である。

以上、この分析は、多様な因子を持つデータを強引に少数の変数に分けて考察したもので、科学的な正確さを主張するものではない。ただ言葉の上の「わかりやすさ」を基準とする「認知バイアス」が正しくないことが多いことの一例を示そうとするもので、正しい分析には事実に基づいた多様なデータベースの構築が必要である。