小さなラウンドアバウト
昼間点灯走行の功罪 ヨーロッパ委員会の報告から
日本の道路での際立った情景の一つに、昼間点灯の車がほとんど皆無といってもいいほどであることである。曇天、暴風雨、雪降りでも点灯車が少なくあたかも道路交通法で昼間点灯が禁止されているように見える。
北米や西ヨーロッパでは1995年ごろから昼間点灯装置の車が発売されはじめ、点灯走行車が増えてきた。特にウインドワイパーと連動して点灯する車は多い。法律で点灯が義務付けられたカナダの諸州ではイグニシヨンキーと連動して点灯する車が普通である。
一般に、これは太陽高度の低い高緯度地方で普及し始めたものであるが、その安全効果は科学的に判定が難しいほど低いといわざるを得ない。
昼間点灯による死亡事故の減少率が15%という報告もあるが、この報告書での分析では死亡・重傷を合わせた事故の減少率は5.9%ほどとみられている。
この論文では、昼間点灯による燃料の消費増加やそれに伴う有害な廃棄ガス放出の損失コストとの比較を試みた結果、事故減少の利益と損失の比は1より小さい(損失の方が大きい)と算出している。
しかしながら、このレポートの結論として事故減少の効果と、コスト低減のどちらが重要かと云う次元の異なった非論理的な判断には言及していない。
The accident rate ratio :ARR = (MDa / KMTa) / (MDb / KMTb) 1
The odds ratio :OR = [MDa / (MNa+SDa+SNa)] / [MDb / (MNb+SDb+SNb)]
The ratio of odds ratios : ROR = [(MDa / SDa) / (MNa / SNa)] / [(MDb / SDb) / (MNb / SNb)]
MD = multi-party daytime accidents, SD = single vehicle daytime accidents, MN = multi-party accidents at night, SN = single vehicle accidents at night, a = using DRL, or after a law requiring the use of DRL has been passed, b = not using DRL, or before a law requiring the use of DRL has been passed. KMT = vehicle kilometres of travel.
Daytime Running Lights (DRL): A review of the reports from the European Commission
http://ec.europa.eu/transport/road_safety/vehicles/doc/consultations/drl_trl.pdf
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人間は過失や錯覚をするものであるという厳然たる事実を無視した警察の道路行政や交通省の道路管理。
これに慣らされた我々は、事故の可能性を無視し、省エネを重要視する傾向が強いのでは?
日本では、歩行者の事故死が欧米先進国に比べて極端に多い。
昼間点灯は、歩行者から見て車がより遠方よりより目立ことで歩行者事故防止の一つとして効果が期待できるのではないだろうか。上掲の表3にこの可能性が見られる。
いずれにしても、日本でもこのような論文に匹敵する科学的な事故分析を積極的にする研究組織に資金を投入すべきであろう。
私の結論
世界で一二を争う安全を実現した日本の自動車交通、事故に遭遇した運転者を罰するだけでは事故防止の限界にきていることは間違いのないことと思う。
ボルボV-40のライトスイッチ。
私の場合、常時このポジションに固定している。エンジンが回転中(イグニションスイッチON)の時、常にヘッドライトが点灯する。エンジンを切れば自動的に消灯する。2013年当時この価格帯の日本車の日本国内仕様車にはこの機能は無かった。
60歳以上の交通事故死者のうち少なくとも40%は59歳までの運転者の第1当事故によるものと推定される。特に75歳以上の層では第1当事故件数の3倍以上の死者数である。
すべての年齢層についの第一当事者事故件数に対する総死者数は約1.1倍であることから、高齢者運転者が一事故当たり多くの死亡者に関わる重大事故が多いという証拠はない。
下のグラフは政府統計の窓口2015の各表から取り出して描いたものである。2015年11月のデータによる。

59歳以下20歳までは、年齢層別に集計した死亡事故の第一当事故件数より同年齢層の合計死亡者数の方が少ない。これは、死亡事故が第一当事者本人やその同年齢層だけではなく、他の年齢層に多く関わっていることを表すものであろう。ちなみに、総年齢層の第一当事者事故件数に対する総死者数は約1.1倍である。
このデータから、20歳~59歳までの1当運転者がかかわった事故件数の少なくとも40%は60歳以上の歩行者や自転車利用者の死亡原因となっていると推定出来る。
政府統計の窓口2015 month%2811%29(7).xls
交通死者 愛知県全国ワーストワン こんな無意味な見出しの新聞記事
毎年出る、まるで季節ものの様な興味本位のこの安易な記事。何の社会的意味があるのであろうか。
こんな記事を書かせるデータを提供する公安委員会。それをまともに受け記事にするメディア、知性の欠如と云わざるを得ない。
下の表は 交通事故統計(平成27年11月末) 政府統計の窓口
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001141868
から抽出したデータを基に作成したものである。
左の表は、愛知県が1位になるのは住民の人口が多く、高齢者の人口割合の順位が低い、若い住民の人口が多い県であることを示している。
右の表、死者数を住民人口10万人当たりに換算して同様に順位を見れば、死亡率の高い県は人口が少なく、高齢化率の高い県であることが分かる。
愛知県の公安委員会もこんなことはわかっていると思うが、愛知県の交通事故が多いように見せたほうが予算や交通安全事業がやりやすいからであろうか。
たわいの無い記事に目くじらを立てないで、笑ってみればよいというのかもしれないが!
道路歩行の危険率 これを運転者のせいにする不合理
歩行者事故死がいかに多いか、歩行者の致死率がいかに高いか、すでに以下の論文で分析されている。
歩行者事故の特徴分析 石川 敏弘,2010. 交通事故総合分析センター
https://www.itarda.or.jp/ws/pdf/h22/13_01hokousyaziko.pdf
そして、歩行中死傷者の大部分は65歳以上、特に75歳以上の高齢者である。
このような事実が5年以上も前に分析されている。
これは世界の自動車先進国での共通の実情であり、これの対策が交通安全の最も重要な主題である。
日本の自動車運転者の安全率は世界一である現在、運転者の教育や当事者の罰則強化では解決しない限界であろう。
図13に見るように高齢女性の死傷率が男性より際立って多いのは、この年齢層の女性の運転免許保有率が少なく歩行者や自転車利用者が多いいことと関係があろう。
http://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h23kou_haku/zenbun/genkyo/h1/h1b1s2_3.html zu01_35(1),Excel
地方自治体ではこのような対策として公共交通機関の充実を云うのが決まり文句であるが、電車やバス利用には、移動目的である戸口から戸口までには必ず歩行や自転車の利用が伴い、これらと合わせた実勢の安全率の評価がなければ交通安全の実効を期待できない。
唯一の効果を期待できる方策は、社会生活に支障をきたすことなく道路歩行者(自転車利用)をいかに減らすかの対策である。
それには、すでに開発されている電子技術による安全補助の装備された車を義務付け、特に高齢者ができるだけ長く自動車交通を利用できるような社会合意を形成することである。
よく言われる「高齢運転者のアクセルとブレーキの踏み間違え」による事故。進行方向に障害物があればブレーキが優先する(自動的に急ブレーキがかかる)車はすでに一部の市販車には装備されている。このような間違いを非難し、免許を取り上げる理由にはならない。
Road Safety Annual Report 2015のOECD加盟国データベースよると、日本の自動車乗車中の事故死者率はオランダ、イギリス、スウェーデンを抜き世界で最も少ないことが分かった。
下のグラフは、日本と、ヨーロッパ4ヶ国のデータから読み取って描いた自動車乗車中の人口10万人当たりの死者数の比較である。これらの値は、運転者だけでなく同乗者も含む。
全年齢層では一位であるが、65歳以上の高齢者グループについてみると日本はオランダについて2位となる。
下のグラフは、歩行者と自転車利用者を合計した死者率の人口10万人当たりの比較である
この場合は、日本は最下位であるばかりでなく、高齢者の歩行+自転車の死者率はとびぬけて多いことがわかる。
これが総交通死者率で比べた国際ランキングでは日本が9位になっている原因である。(参考)
私は、デンマークを除く上記各国を運転して旅行しましたが、日本と圧倒的に違うのは、高齢者が一般道路を自転車で交通している状況はあまり見かけた記憶はありません。自転車王国オランダでも例外ではありません。
日本の交通事故を減らすには、高齢者ができるだけ長く自動車利用ができるような政策がポイントであると思われるが、私の今まで書いてきた一連の交通事故関係のブログを見て、この主張は高齢者のわがままと感じている人があるかと思う。
しかし、以下の事実を理解してほしい。
高齢歩行者や自転車利用者の死亡事故にかかわる不運な社会的被害者は高齢者とは限らない。
下のグラフは、日本の政府統計データベースより描いたものである。
これで見ると、20歳以上59歳までは、年齢層別原付以上(第一当事者)の事故件数より同年齢層の総死者数の方が少ない。これはこの年齢層の運転者は、他の年齢層の死亡事故に関わっているとみるべきで、その死亡者の殆どが60歳以上の年齢層であるといえる。
政府統計の窓口2015
上のグラフで75歳以上の場合だけを切り離して、高齢運転者は事故当たり3件の死者を出している危険運転者とみるのは間違いである。全年齢層の死亡者数と死亡事故件数の比は1.1である。
正しくは、高齢者の死亡事故にかかわった人たちは60歳以下の壮年運転者である。
言い換えると、高齢歩行者や自転車交通の交通事故死に関与して社会的責任を負わされているのは壮年運転者層であり、死亡こそしないが交通事故被害者といえる。このことに気が付かないで、高齢運転者を減らし歩行者や自転車利用に追いやれば皆が安全になると思い込んでいるあなた方、交通弱者といわれるこれらの人々の死亡事故の加害者にされるのはあなた方である。
参考。日本の交通死者のランキング。
まるで春のよう 我が家の庭 1月元旦
2015年のまとめ
WordPress.com 統計チームは、2015年のあなたのブログの年間まとめレポートを用意しました。
概要はこちらです。
シドニーにあるオペラハウスのコンサートホールには2,700人が収容できます。2015年にこのブログは約8,500回表示されました。オペラハウスのコンサート3回分になります。
ヨーロッパでの高齢者運転免許更新に関するケース・スタディー
PubMed Traffic Inj Prev. 2008 Aug;9(4):360-6. doi: 10.1080/15389580801895160.
The licensing of older drivers in Europe–a case study.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18696393
目的
ヨーロッパの国々では、いろいろな方式の運転免許更新手続きを実施している。
それらの中には生涯有効な免許保持の国から、70歳から3年ないし5年間隔で更新を要求し、その際、医療的な健康状態の自己申告を要求するところから、医療検査を要求する国、また45歳から5年毎の更新を必要とする国まである。
このような多様なヨーロッパ各国の高齢者の安全性と制度との関連について調べる。
方法
フランス、オランダ、イギリス、デンマーク、フィンランド、ノールウェイそしてスウェーデンの7か国について。最も規制の緩い国から最も厳しい医療検査を要求する国までについて研究を行った。
結果
免許更新方式の違い。医療検査の要求のあるなしにかかわらず、どの方式でも65歳以上の運転者の総合的な道路安全に効果があった証拠は見出せなかった。
最も更新条件の緩やかなオランダとイギリスにおいて、65歳以上のドライバーは最低の死亡率であり、(条件を緩やかにした)フランスでは急速に低下しています。
結論
厳格な運転免許基準は高齢者の運転免許の保持率を下げることになる。基準の緩やかな、フランス、オランダ、イギリスは65歳以上の高齢者の免許保有率は最も高い。
約半数のヨーロッパ諸国での交通死亡統計の分析の結果、65歳以上の高齢者の事故死リスクは、車の運転より歩行者としての方が危険が大きい。
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私のコメント
ヨーロッパの国々は、運転免許制度ばかりでなく言語も異なるにもかかわらず、自動車運転での移動は自由である。アメリカ、カナダ、オーストラリアでは、道路交通法は国ではなく州法であり、免許基準や法規は国内でも異なる。しかし州境を超えての運転は自由である。
したがってこれらの国々では、高齢者免許に限らず運転規則、道路標識まで、道路利用者による安全性に関する検証、あるいは比較が可能で、常に改善されている。
日本では、高齢者の歩行・自転車利用の事故死亡者がヨーロッパ諸国の何倍も多い。その理由のひとつが高齢者の運転免許保有率が少ないことが原因している、にもかかわらずこの事実を理解せず、益々高齢者の機動性を奪う交通政策を進めている。
また、世界の先進諸国では常識化されている統計認識に無知で、個々の事例をあたかも普遍的事実のように見せるテレビメディアのドキュメンタリーの氾濫、これを信じている交通関連の自治体関係者や個人が多い。
せっかくここまで来た世界でトップクラスの道路安全な国から、高齢化による歩行者の増加が原因の交通死者の増加、また交通死者の多い国に転落させることになることに気が付かない不思議さが理解できない。
なお、この論文の全文は有料なので参照していない。
高齢者運転 日本では統計的事実を無視した人権違反の氾濫 交通監督官憲もメディアも
このような総合レポートを日本の関係機関のもので参照するのは困難(皆無?)。
外国のレポートを参照しなければならない情けない実情。(日本のデータも含めて)
科学的事実に無頓着、迷信に近い思い込みを根拠にした無責任な政策や、キャンペーン。
警察庁はデータを持ち、国際組織(OECD)などには公表しながら日本では正しく発表していない。
世界のレポートも読めない低レベルの集団とは思えないが?
このレポートは175頁に及ぶものであるがその要点を見てみよう。
以下は、原文のまま参照してください。
The report’s findings can be summarised as:
● Mobility is essential to the quality of life of older persons, and the automobile is the primary means of meeting that need;
● Most older drivers have good driving records. Up to the age of 75, most older drivers appear to perform as well as middle-aged ones;
● Older persons are among the most vulnerable to injury in motor vehicle crashes;
● In general, visual and cognitive performance on driving-related tasks diminish with age;
● Because, for any individual, age is a poor predictor of performance, age alone should not be the basis for restricting or withholding driving licences; and
● Sign visibility and maintenance standards, assumptions about performance used in intersection design and traffic operations, and vehicle crashworthiness standards fail to account for the needs and capabilities of older persons using the roadway system.
The report makes a number of detailed recommendations on signage, roadway design, vehicle safety, customer information, driver screening and licensing, and alternative means of transport.
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この要約は、日本の各機関で公表され一般に思い込まされているわれわれにとっては、思いもよらない事実といえよう。
ついでに根拠とされているグラフの一部を転載する。
これはイギリスの話、運転マナーの悪い日本とは違うとの声が聞かれそう。
私は、イギリスをはじめ、西ヨーロッパ、アメリカ、カナダ、オセアニアなど運転経験がありますが、日本の運転者の運転マナーが際立って悪いと思ったことはありません。
これも、事実に反した誤った摺りこみ。どの組織か知らないが、何らかの意図で行っているとしか思えない。
