スウェーデンで始まったビジョンゼロの交通安全システム 世界の先進国都市で次々に実施
スウェーデンで始まったビジョンゼロの交通安全システム 世界の先進国都市で次々に実施 ニューヨーク市でさえ効果を上げている. 日本が無関心な理由?

ニューヨーク市のビジョンゼロ 市長の宣言
ビジョンゼロ、スウェーデン交通安全局(SNRA)の解説から。
1997年10月9日、道路交通安全法。スウェーデン議会で大多数によって可決された法律。
道路交通で人が死亡したり重傷を負ったりすることは決して容認できないという倫理的な基準の哲学からの立法。
この法律、は明示的な目標を中心とし、道路安全に対する伝統的な間違ったアプローチ(過失事故を無くする)に挑戦する高度に実用的で科学的に基づいた戦略である。
発案者ティングバル氏の話。
〇ドライバーなど道路を使う人が交通安全に責任を持つという考え方を放棄し、
〇ビジョンゼロでは交通システムを作る側が可能な限り安全性に責任を持ちます。
その根拠には、人間の判断は完ぺきではない(過失や誤認をする)という思想であり、それを前提に交通システムを作っていくのです。過失をしても事故が起きないような設計にします。事故が起こってしまっても、衝撃を抑えるような設計を車や道路インフラに取り入れるのです。それは、重症や死亡から耐えられる衝撃力が分かっているからです。
これと正反対の日本、事故はすべて運転者や道路使用者の責任、その結果どんな苛酷な事故になっても運転者の自業自得、道路設計者、管理者には責任がない。道路交通法は究極の善であり、不運な事故関係者の責任を摘発し罰すれば事故は無くなるという。事実を無視し迷信を基本とした交通安全政策。
自由主義先進国では見られない交通警察国家日本。統計の結果は、高齢歩行者や自転車利用者の交通死亡者が飛びぬけて多い日本。ただし、乗用車乗用中の死亡事故は世界一少ない安全を実現した日本。高齢運転者の運転免許更新に負担をかけ、さらに免許返納運動など、脆弱な交通に追いやった結果か?
春の息吹






交通事故死の推移 世界の航空機事故と日本の自動車事故
下のグラフは世界の旅客機の事故死者数と、運んだ乗客数の年次推移である。変動が大きいが事故死者は1990年代からほぼ半分に減少しているが、その間の輸送乗客数は約7倍近く増えている。


上の図は日本の自動車事故死者数と運転免許の保有者数の推移で、男女に分けた場合である。男性は2000年頃飽和に達しているが女性の場合は依然として増加が続いている。事故死者数は1990年頃のピーク以後2017年までに約3分の一に減少している。女性の運転免許保有の増加は航空機の乗員増加率には及ばないが、事故死者数は安定して減少をたどっている。
走行距離・台数など必要な要素を無視したデータベースに基づくものではあるが、重要な交通手段の安全性を見る一例ではあろう。
“航空機事故が起こるごとに、航空機の安全性が増す”。
航空機事故の真実と真相 。ナショナルジオグラフィックのテレビチャンネルより。
日常生活で、誰でも遭遇する可能性のある交通事故、日本では、事故を「起こす」あるいは事故を「引き起こす」こんな言葉しかないようだ。交通事故、多くの場合事故に巻き込まれた人たちの間でお互い様の場合が多いが、その概念や同情心はないようだ。「やった」「やられた」だけのように見える。
人間は過失や判断ミスをする。航空機事故ではこの事実を前提に調査される。航空パイロットは適性を審査され厳しい訓練、そして2人乗務、車の運転とは比べ物にならない。それでも人為的過失が原因の事故が皆無とは言えない。その過失の原因を 人間工学的に 究明し、同様の原因で再び事故が起こらないよう改善される。
こんな行政組織が日本にはない。バス事故でさえ、運転手と運航会社が処分されるだけである。
交通事故における致死率(脆弱率)と年齢層別交通形態との関係
警察庁のデーターベースe-Statでは統計的に交通事故の原因に多変量解析をしようとしても必要なデータセットとしてパラメーター不足、利用が困難である。
今回は限られたデータから、主な交通形態について、人身事故に於ける致死率(身体脆弱率)を推定してみた。
下図は、自動車乗用、自転車利用と歩行の代表的な交通手段について算出した致死率を、年齢層別交通形態別に描いたものである。

歩行中の致死率がすべての年齢層で際立って大きいだけでなく高齢者側では加齢とともに上昇している。自動車乗用でも75歳以上で増加するが歩行ほどではない。これを見て高齢者は事故を起こしやすいとみるのは誤りである。このグラフは、高齢者が事故に遭遇したとき苛酷な結果である死亡になりやすさを含んだものである。事故死者数で交通事故を計るのはオーバーエスティメイトである。下図でその証拠を示す。
この計算で分母となる負傷事故数についてみてみよう。

最初のグラフとは逆に高齢になるにしたがって、自動車事故による負傷者数は50歳代から年齢とともに減少する。 これは、人口や運転免許保有者が減少すること による効果が大きいと見られる。しかしながら、歩行や自転車利用中の事故は79歳までほぼ変わらない。これは、高齢にいくほどに歩行や自転車交通が増加しているからである。65-69歳層に見られる増加はベイビーブーマーの人口増によるものである。これが実勢の人身事故状況である。高齢運転者が社会に危害を与えているという根拠は生じない。

上のグラフは、2017年における各交通手段別の年齢層別死者数で、すべての交通形態で、年齢が増すにしたがい増加している。これは致死率(脆弱率)の増加によるもので、死亡事故件数だけを見て事故を起こしやすいと決めつけるのは明らかに誤りである。
よく見る警察庁交通課の広報では、この事故死亡数の高齢側の増加を利用して高齢運転者を差別し排除するキャンペーンをしているが、各段に大きい歩行者の死亡増には触れないで隠しているように見える。理由は知る由もないが。
危険な運転者を取り除くために、根拠の薄弱なスクリーニングで、多数の安全に運転出来る運転者も合わせて除き(運転免許返納の勧め)、歩行や自転車交通に追いやることは、社会における総合的な交通事故死者を増やすことになる結果を生むことは今日自動車交通先進世界では常識となっている。
高齢者の運転能力評価に関する日本の学会論文を読んで
各国における運転適性と安全に運転出来る能力の評価方法 岡村和子. 科学警察研究所交通科学部第二研究室長。 国際交通安全学会誌 Vol. 42, No.3
http://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/42-3-07.pdf
この論文は独自の研究論文ではなく、レビュー論文はといえるものと思うが国際的な共通認識に基づく紹介論文と思う。
この論文を読んで、私なりに注目した要点を箇条書きにして記述を試みたものである。
_______________________
日本では、高齢の歩行者や自転車利用者の交通事故被害に深刻さが顕著である。
日本では高齢者の運転免許更新時に義務化されている運転適性評価に不合格、また評価されることを拒否して運転を断念する人はその後別の形態での交通に参加することになる。
交通参加形態の別を超えた個人と社会にとっての安全とモビリティーのバランスを考慮することが重要である。
日本の高齢者、特に高齢女性の免許保有率が低いことと高齢者の歩行中死亡率が高いこととは関連があろう。
ドライバーの運転能力評価は重要な課題である。安全な運転に支障がありその不安要素を払しょくする手段がない場合は運転をやめるべきであろう。これはどの年齢にも当てはまることであるが、日本では高齢ドライバーに社会の関心が集中する傾向が強い。
65歳以上と64歳以下の群で比較したところ65歳以上のドライバーが関与した交通事故のほうが64歳以下の場合より減少率が大きかった。スウェーデンの研究者による1983年~1999年のデータから。
日本だけが他国に無い、高齢者運転免許更新に講習受講を義務付け、多岐にわたる検査条件が義務化されている。
欧米では、運転の技能試験は、医学的な運転適性の結果がグレーゾーンであり、追加の情報が必要な場合に限られる。
オーストラリアでは、運転免許の担当官庁と、各領域の医師や患者団体の他、職業訓練士団体や交通安全にかかわる研究者などが複数のワーキンググループを組織して制度の作成や随時の改定を行っている。
北欧諸国、オーストラリアおよび米国の州間比較をした結果からは、免許更新時に医学的検査等を実地している国や州の交通事故率が、そうした対策をしていない国より低いという明確な結果は得れれていない。
フランスやドイツなどでは、悪質な交通違反や交通事故による免許取り消し処分を受けない限り免許は一生有効である。
イギリスでは、所定の申請書に列挙された病気や症状を郵送やインターネットで自己申告をする。その結果特定の病気や症状がなければ3年の免許更新が得られる。
高齢ドライバーに対する医学的スクリーニングを厳しくした場合。安全に運転できないドライバーを把握できる一方、運転を止める必要がない人まで運転を断念する場合が生ずる。
身体機能が低下ししていることが多い高齢者が、身体機能が高い年齢層と比べて、交通事故を引き起こすリスクが高いというわけではない。
高齢ドライバーだけに、現状の交通環境に適応することを求めるわけでなく、運転支援技術、道理交通環境、交通参加者全体が社会の高齢化により積極的に対応していくことも大切なく、のではなかろうか。
以上
__________________
特にメディア関係者は、交通安全関係の記事を書く前に欧米の各種原論文を読んでほしい。
なお、この論文では議論の根拠とした参考文献リストが22件ほど添付されているが、通常欧米各国の同様のレビュー論文では100件以上の検証可能な査読システムを持つ学会誌等の論文リストが提示されているのが普通のように思う。
車の無い大都会、江戸の町は現代に再現できるだろうか?
交通手段の違いによる道路利用構成率(暴露率)がそれぞれの負傷者数に比例すると仮定したとき、交通事故死亡危険構成率と比べてみる。

道路利用構成率では歩行と自転車が全体の14%、それに対し交通事故事故死亡者では50%。自動車利用では、65%の利用率であるのに死亡率は33%。これが現代の日本の交通実態である。
歩行や自転車の交通死傷事故は殆ど自動車による被害事故である、上の議論は矛盾に満ちている。悪いのは100%自動車運転手であるというう声が聞こえてくる。しかし人間科学では,自動車を運転する限り過失事故が皆無になることはありえない。日本はすでに世界で乗用車事故の最も少ない社会を築いている。
貴方が運転するしないにかかわらず、現代の生活では貴方の移動だけでなく、貴方が生きていくための食料をはじめ環境整備に、あなたの代わりに誰かが事故のリスクを負って各種の車両を運転している事実に気付いてほしい。運転しない貴方も間接的な加害者である。
人力荷車だけの江戸の町はそれでも暮らしが成り立ち、世界で一番安全で清潔な大都会であったかも知れないがそんな都会を再び構築できるであろうか?
年齢層別道路交通需要指数の推定試算
交通需要を交通事故負傷者数に比例する量と仮定した場合、年齢層別需指数と主な交通手段である自動車乗用と歩行+自転車利用の場合の分担率について調べてみた。

上の3Dグラフで、全状態の交通事故負傷者数は加齢とともに人口が減少がするばかりでなく、健康上の理由で移動が困難になるがため70歳以上で急激に減少する。65~69歳の増加はベイビーブーマーの人口増によるものである(2017年時)。これと交通手段の二つの主な分担について示したものである。公共交通機関利用は安全ではあるが、移動の目的を達するには歩行や自転車などの接続利用が必要で(タクシーを除く)単独の利用はありえない。

このグラフは、年齢層別の自動車に対する歩行・自転車利用の相関を示したもので、正反比例を示し、相補関係となっている。例えば自動車利用を制限しても歩行・自転車が増え、全状態での交通需要量は変わらないことを示す。
具体的には、現在日本で警察庁・地方公安やメディア、一般に迷信として信じられている「高齢者の運転を制限すれば交通全体が安全になる」がはほんとであろうか?。高齢者から自動車利用を減らしても、死亡率の高い歩行や自転車移動が増え総合交通死亡事故は増加する。これはフランスでは実証済みである。
現在の技術で実現可能な自動車の自動安全装備、よく言われるブレーキとアクセルの踏み違えによる事故のような原始的な話は昔話にできる。
行政の可能な最も効果のある道路交通安全政策は、車の安全装備の義務付けである。運転者の過失を厳罰化したり、高齢者から運転免許を取り上げることではない。航空機の事故原因調査の歴史を見れば明らかである。
高齢者はタクシー以外の外出は禁止とする。高齢者の道路利用は「社会迷惑として制限すべき」人権に無頓着な現在の大臣レベルでは言い出しかねないが。
日本の総合的交通事故死を減らすには、高齢者の乗用車利用をしにくくするのではなく、高齢者に、衝突防止装置や身体を保護を強化した安全性の高い乗用車交通を利用できるような社会政策を進めることである。以下にその証拠を示す。

第一図: 上のグラフはe-Stat警察庁のデータベース1)を用いて自動車乗車中と歩行+自転車交通中の致死率(脆弱率)を算出し描いたものである。方法は、年齢層別状態別事故表を用いて死亡者数を負傷者数で割った%表示である(2017年)、誤差範囲は年間死亡者数の推定標準偏差率の2倍の範囲で示した。
致死率は高齢とともに増加するが、自動車乗車中では70歳以上で増加が始まるのに対し歩行では65歳以上から始まる。これは高齢に伴う身体の脆弱性の増加が路上に直接さらされる歩行や自転車交通においてより顕著に表れることを示す。
下のグラフは、自動車乗用中と歩行・自転車交通との負傷事故分担率を高齢者層の年齢区分について示した相関図(2017)である。自動車利用率と歩行・自転車利用率は逆相関になっていることが分かる。データプロットの上の表示は年齢層区分を表す。(第二図)

各交通形態での人身事故率を交通の路上暴露率(路上利用指数)に比例するとすると、50歳代では70%強の自動車利用率であるのが80歳代あるいはそれ以上では車利用は40%以下でしかなく、50%以上の歩行・自転車交通を強いられていることが分かる。
これと、第一図の交通手段による致死率を合わせて考ると。高齢者の自動車利用が少ない日本の交通事故死者の特徴が分かる。それは、
OECDデータベース2)では、32ヶ国中の交通事故死亡率の少ない方からの順位で日本は、乗用車では一位、歩行者25位、また、総合道路交通事故死順位では日本は25~64歳層では第4位、65歳以上では21位となっている。
日本の総合的交通事故死を減らすには、高齢者の乗用車利用をしにくくするのではなく、高齢者に身体を保護された安全性の高い乗用車交通を利用できるような社会政策を進めることであることは明らかである。
交通事故における死亡者数と負傷事故 高齢者ほど死亡者数は多いが負傷者事故は多くない。第1図

上のグラフは、2017年における交通事故の年齢層別負傷者数(左)と死者数(右)である。このように両図では全く傾向が違う。これは道路交通先進国では知られている一般的な知識である。右の死亡者数のグラフを示し高齢者が事故を起こしやすいと宣伝するのは間違いである。
これはよく知られている高齢者の交通事故に対する脆弱率として知られている。
下に日本の警察庁発表のデータベースe-Stat2017の欄から描いた年齢層別死傷者数(分母)に対する死亡者数率%グラフを示す。

これは、年齢層別にそれぞれ死者数 ÷ 死傷者数を%表示したものである。第1図の右側を左側で割った%比率である。
これで見るように。衝撃に強い体力を持つ50歳以下に対し60歳以上では指数関数的に死亡率が上昇している。