日本の歩行者の交通事故死が先進国中異常に多い理由 国土交通省の都市交通特性調査データベースからわかったこと 日本では公共交通機関の発達で道路の歩行者数が多いのが原因している
公共交通機関は交通手段として、安全、エネルギー保全、地球環境への影響などいずれの面でも優れているが、”外出単位”(ある目的で外出し帰宅するまでを1単位と数える)で見るとき、公共交通機関だけで完結することはない。ほとんどの場合、徒歩・自転車・自動車(乗用車運転・同乗・軽自動車・モーターサイクル)などの併用で成り立つ。
したがって、公共交通機関の利用は安全であるという”神話”は外出単位で見た場合実情に合わない。特に日本の歩行者の交通死が先進国中異常に多いことの原因を考えるとき、欧米諸国に比べ、都市部・都市近郊での公共交通機関が発達している結果として、歩行・自転車の利用割合が高ことが原因と推定される。
1外出単位ごとの交通手段の利用割合を考えてみるとき、移動距離、移動に要した時間の割合等、どの指標を使うかでも解析の結果は異なってくるので難しい。残念ながら、そのようなデータベースの存在は知らない。
一例として以下のデータから分析を試みよう。
-平成 22 年全国都市交通特性調査集計結果から- 平成 24 年 8月
国土交通省 国土交通省 http://www.mlit.go.jp/common/000223779.pdf
この報告書は、アンケート調査の集計データベースである。報告書中の用語の説明は
〇 トリップ: 人がある目的をもってある地点からある地点へ移動 した単位をトリッ プとい、目的がかわるごにトリップもかわります。1回の移動でいくつ交通手段を乗 り換えても1トリップと数ます。目的がかわると2番 目のトリップとなります。
〇 代表交通手段: 1つのトリップがいくつかの交通手段で成り立っているとき、このトリップで利用した主な交通手段を「代表交通手段」といいます。主な交通手段の集計上の優先順位は、鉄道>バス>自動車>二輪車>徒歩となっています。
私のブログでは、トリップ(trip)の代わりに”外出単位”と表現します。また、公共交通機関利用を含む外出単位の場合、国土交通省のこのデータベースでは、主な交通手段に公共交通機関として集計されてしまうが、公共交通機関の単独の利用は考えれれないことから、自動車(自分または家族の運転)以外の外出単位では、同時に徒歩・自転車その他を利用するものとみなし統計しました。
このグラフは上記の国土交通省データベースから、外出単位ごとの歩行等の実行分担率を描いたもので、全国の平均の歩行等の分担率は55%程度(2010年度)である。いずれの区分でも大都会ほど歩行割合が多いことがわかる。
下のグラフは、私のブログ https://spaceglow.wordpress.com/2013/05/18/公共交通機関の整備だけで歩行者交通事故の死者/ で記載したグラフ、「全移動手段における歩行の割合」に日本のデータを付加したものである。
これで見ると、日本は歩行者の分担率がヨーロッパ諸国死比べとび抜けて大きいことがわかる。全事故に対する歩行死者の割合は、日本が報告したOECDの値よりとったものである。
グラフ中 X 印は、近似関数から推定した日本の高齢者の死者の割合を参考として記入したものである。歩行者のみの死者比率では高齢者は50%以上となるが、ここでは全交通死者との割合である。
このグラフを見て、世界で最も交通安全の進んだ西ヨーロッパ諸国と日本の歩行者の事故要因に本質的な変わりはなく、ただ日本では歩行者が多いのが原因しているといえる。
不思議なことに、ヨーロッパでは交差点がラウンドアバウト方式が主流で、日本と交差点の方式が異なるにも関わらず統計結果を見る限り変わりはないようである。
私がこのブログでたびたび証拠を挙げて示してきたように、日本の運転者は、自動車相互の事故ばかりでなく、対歩行者に対しても、世界で最も安全な運転者であり、歩行者も諸外国に比べて横暴とは見られない。日本で歩行者の交通事故死者が多いのは外出単位当たりの歩行者分担率が高いからであることがこれで証明されたと思う。
歩行者事故を運転者のせいにし自動車交通を減らせば歩行者が増え、かえって通事故死者の数が増えると分析したヨーロッパでのケーススタディーの結果を証明しているともいえよう。 https://spaceglow.wordpress.com/2011/01/19/高齢者に対する厳しい運転免許更新条件は、かえ/
今まで交通事故に対する研究で空白となっているのが歩行者の安全研究で、これが最重要な課題であることがこれによってわかる。公共交通を進めるのであれば、現在の道路環境を科学的研究に基づいて合理的に変える必要があり、そうでなければ、最も安全な交通手段は自動車利用である。このことは高齢者に顕著に表れている。