福島原子力発電所放射能災害 始めて見た科学論文 ネイチャーの科学レポートより
2011/09/09
弘前大学などの研究報告。福島県浪江町赤字木地区の高汚染地区住民の推定年間被曝量の推定論文が世界で評価の高いイギリスのネイチャー誌に受理され出版された。
- Scientific Reports 1、Received 27 June 2011、 Accepted 22 August 2011 、Published07 September 2011
- 論文を書いたり研究テーマを決める時、世界の科学者の間で流通していて必ず目を通すべき専門雑誌がいくつかあり、その信頼性は研究者のコミュニティーで常に評価されている。この英科学誌ネイチャーは最上級の専門誌である。このことは、世界で評価を受ける論文誌に論文を書いたことのある人なら経験済みであり常識である。
- 少し説明してみよう。上記の英文の行、上から論文の表題、書者名リスト、論文の分類、編集委員会に論文が届いた日付、論文が承認受理された日付、出版された日付。
- それぞれの学会誌は、公開された編集委員を持ち、論文が応募されると、編集委員は同じ専門の研究者複数を選び査読してもらう。査読者は、世界でその分野で最も活躍している現役の研究者から選ぶ。査読者は論文内容を精査し、疑問や問題点等を原則として編集者を通して著者と議論する。それが出尽くしたところで編集者は、その論文を受理するかどうかを判断する。このような手続きを経て初めて出版されるものである。
- したがって、学会誌の評価は、査読者選びによってきまると云っても過言ではない。この報告論文を見ると、論文が編集委員会に到着した日が6月27日、受理されたのが8月22日、約2カ月、これは異例の短期間ではないかと思う。
- また、測定の根拠、測定方法、推定の科学的根拠など、それぞれの要点では参考文献を付記していて検証可能とすることも論文には必須の条件である。この論文では全16タイトルの参考論文がリストされている。
- この論文の結論は、赤字木に住み続けた場合の年間積算外部被ばく量を194mSvとしている。ただし、木造屋内遮蔽効果係数を0.4として計算し、屋外8時間屋内16時間で計算しているが、この根拠についての参照論文は記載されていない。
- この地域の住民は避難勧告に従って、5月11日に福島市など低汚染地域に避難したとして、これらの人たちの年間被曝量の推定値を最大68mSvとしている。ただし、放射線量データの欠落している3月12日から14日までの値を、3月14日の降雨前の値を用いこの間一定として推定しているがその根拠については触れていない。
- Discussion の終わりにこの地域の避難指示はよい決断だったとしている。
- そのほか、雑草地などは舗装道路に比べ最高2倍ほど空間放射線量が多い場所があること。福島原発から北東部の高汚染地域では原発との距離とは無関係であることなどにふれている。
- γ-線のエネルギー分析による放射能核種の分析では、その結果のグラフを添付しているが、ここで重要と思われる新事実は、福島県Kunimiと岩手県Oshuの違いである。Kunimiではすべての放射性核種について3月19日にくらべ4月25日では十分の一ほどに減衰しているが、それより遠方のOshuではこの期間期間減衰が少ないばかりか、Cs-137では増加がみられる。これは何らかのインプットがあったのではとの見解を呈出している。
- 空間放射線による積算線量は、私を含め、他の期間での4月の時点での推定値と大差ないが、信頼できる学会誌での公表の意味は大きいと思う。
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