10年間で実現した日本の自動車交通事故の半減 85歳までの高齢者を含むすべての年齢層で 歩行中の負傷事故ではその恩恵はわずか
10年間で実現した日本の自動車交通事故の半減 85歳までの高齢者を含むすべての年齢層で 歩行中の負傷事故ではその恩恵はわずか
メディアの根拠がない無責任なキャンペーンの証拠が浮き彫りに。出生年度区分ごとに追跡することによる交通事故の加齢変化
出生年度区分毎の交通事故に関係する状態値を年次追跡することで、年齢進行と運転事故の実態について精査を試みた。一般に年齢効果は5年年齢階級の観測値で比較する場合が多いが、この場合各層の母集団は統計的に見て均一ではない、例えば、40代と80代の同年度のデータで事故の大小などを比較することは、出生年代が40年も違う集団を同質の母集団とする不合理が生ずる。一例としてベイビーブーマー世代では前後の世代に比べて人口が多く、その集団は年経過とともに高齢化していく。現在その集団が70歳代にかかってきている。人口増があれば当然交通需要が増えそれに伴って交通事故も増加する。比較するには、比較する母集団が同質でなければならない。
そのために出生年が同一層での年次進行を追跡することで、事故に関する主要要素を調べた。方法は、e-Stat警察庁のデータベースの2006年~2016年までの表から、各種形態値の10年間変動値を調べた。
20歳以上の運転者についてこの関係を示したものが下図である。グラフの30歳代の値に免許保有指数が1より大きいのは、この年齢では新たに運転免許を取る世代が含まれているためである。40歳から65歳までは人口と免許の保有は同一であり、この世代は免許更新を継続していることが分かる。運転免許放棄が始まる年齢は65歳からと見られる。

運転中第一当事者となった事故件数は80~84歳区間では10年前に比べ0.35( 35%)に減少し他の年齢層よりむしろ低下している。これは高齢化による人口の減少と運転を放棄する効果が含まれている。この事実は、高齢者の正常な自主判断による運転自粛で実現されていると評価すべきである。(この時代、警察庁やメディアから高齢者の運転免許返納奨励が今日のように強調されていなかった)。
このグラフで明らかのように10年間で自動車乗車中の負傷事故の減少は大きく、年齢による人口減とほぼ並行して減少していることを示している。このことからも、高齢者に取って乗用車利用が最も安全な交通手段であることが分かる。
それに比べ、歩行中の負傷事故減少率はすべての年齢層を通して小さく、ほぼ変わらない。80~84歳で事故が減少するのは、健康上の理由で道路歩行による外出が困難になる割合が多くなる結果を含むと見られる。
以上の結果は、2006年から2016年の10年間、道路の管理、インフラ投資等による交通事故の減少効果と見られ、自動車運転者と同乗者ともにほぼ半減しているが、歩行者にはその恩恵は及んでいないことを表している。
ヨーロッパでも同様で、現在盛んに歩行者と自転車利用者に対する安全対策が研究・試行されている。
下表に運転中事故で第一当事者となった運転者の出生年と2006年、2011年および2016年における年齢と事故件数と、2006年を基準とした指数を表に示した。

結果、どのデータを見ても、昨今盛んに云われている高齢者の運転事故が際立って多い根拠は見当たらない。