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警察庁広報も統計の拾い読み 高齢運転者を悪者にする根拠はどこに?

2019/02/05

警察庁広報も統計の拾い読み 高齢運転者を悪者にする根拠はどこに?

今日、日本の自動車交通安全の問題は運転者ではなく、現在すでに開発済の自動安全装置の装着を義務付けることで運転者の過失事故のほとんどの場合はなくなるはずで、これこそ交通安全に最も効果のある実現可能な政策であろう。

下のグラフは警察庁のオリジナルデータベースから描いたものである。1)

日本の道路交通における2017年の実勢の運転者事故件数が左、これを各年齢層別運転免許保有者数10万人当たりに換算したものが右図である。右図は、どんなに日本の高齢化が進んでも85歳以上まで各年齢層あたり同じ運転免許保有数になるとはありえない場合の仮想グラフである。これを高齢者の運転を放棄させる根拠とするのは、統計音痴かそれとも交通警察の権力誇示の悪意からか?

下の表及びグラフは、5年区分年齢層の年次比較ではなく、同一出生グループでの直近の年次進行の様子を表したものである。

統計の比較が可能なのは同一母集団の間である基本に従って、同じ出生年グループでの2012年度と2017年度の運転者事故(第一当事者)件数を追跡することで事故件数の年次変化率の多項式近似式を求めた。

この近似式の外挿値を用いて、2017年の実測値から、2022年と2027年における事故件数の予測値を推定したのが下図のグラフである。

このグラフ中,どの曲線にも見られる二つのピーク値の年次移動は第一次二次のベイビーブーマーによる人口増の年次移動によるものである。高齢層(65歳以上)では、現在第一次ブーマーの年齢にかかりピークの高齢者側の75歳以上の事故件数の年次下降が見られないのはその影響が大きい。それに比べピークが離れていく時期にかかっている60歳~70歳層では事故件数の減少が目立つことになる。この事情は第二次ベイビーブーマーでも同様の傾向が見られる。

この効果を除くために、警察庁のデータベースは運転免許保有者10万人当たりに正規化した表が合理的とみる意見もあろうが、これは全年齢層の運転免許保有者が10万人であるという仮想の数であり、こんな現実離れしたデータを基礎に社会の安全対策を云うのは明らかに間違いである。

警察庁が折に触れ宣伝する高齢運転者の運転事故激増は、このベイビーブーマーの人口増の高齢化移動による運転者の増加によるもので、言い換えれば、道路交通需要の変化によるものであり、これが罪悪というなら現在現職の公務員の皆さんは定年後自宅に引きこもり外出をしないというのだろうか。

2017年時点での高齢者(65歳以上と75歳以上)の実勢値と、今回試みた2022年2027年の予測値で、第一当事故件数と運転免許保有者について全運転者に対する割合(分担率)を示したのが下のグラフである。

これで見るように、高齢者(65歳以上)も後期高齢者(75歳以上)も運転者の(第一当事者)事故率は運転免許保有数に比例し本質的な違いは見られない。

何れにも見られる高齢による減少は、病死や健康理由の運転免許放棄のためである。下図に2012年と2017年の運転免許保有継続率を示す。これは同一出生年グループを追跡したもので、25歳以上で新しく運転免許を取る人はわずかであり増加は殆どない、以後65歳までに免許を放棄する人は少なく、以後の減少は死亡や健康不良などによるのが主原因と見られる。

以上2017年までの推測値を試算してみたが、これは統計的に不正確で無理だというお叱りを受けると思うが、自動車に装備される安全装置がこんな先まで今のままであると考える方が陳腐であろう。たとえ完全自動運転技術が2027年までに実用にならなくても、ブレーキとアクセル踏み間違いによる事故。これは人の問題ではなく、現在開発済の自動安全技術を装備することを車に義務付ければほとんどの場合なくなるはずで、これこそ交通安全に最も効果のある実現可能な政策であろう。

1)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00130002&tstat=000001027457&cycle=7&year=20170&month=0

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