高齢者の外出目的の違いと利用交通手段による事故死亡率の試算 中短距離では乗用車利用が最も安全な交通手段である
高齢者の道路歩行は最も危険な交通であり、公共の交通機関は外出の目的を達成するために必ず歩行が含まれる。歩行や自転車利用は短距離であっても危険率は非常に大きい。乗用車利用はこの危険を最小限にする最も安全な交通機関といえる。
高齢者の生活に必要な最低限の外出とその交通手段の違いによる事故死亡率を試算してみた。計算の基礎はフランスのデータベース・昨日の記事”Exposure-based road traffic fatality rates by modeof travel in France”から Fatality rates per million hours spent travelling の表を用いた。

- 上の表は4つの交通手段による100万時間利用当たりの事故死亡率で男性の統計データである。フランスの市街地では自動二輪が多く利用されているが日本では一般的ではないので省き、3つの交通手段について外出目的の違う3例について試算してみた。
外出目的としては、短距離:往復1km以内、中距離:5km以内、長距離:20kmのモデルを考えた。それぞれの利用可能な交通機関として短距離では歩行、自転車、乗用車。中距離では自転車、乗用車、バスまたは電車。長距離では乗用車、電車バス。ただし公共交通機関利用では必ず歩行が伴うので一旅行あたり1kmの歩行を加えた。このモデルの基礎データを下表に示す。高齢者>=70の場合。



- グラフの左、短距離:往復1km以内では可能な交通手段として歩行、自転車、乗用車の三手段であるがこんな短距離でも死亡率は歩行が最も危険、乗用車利用が最も安全であることが分かる。
- 中央のグラフ中距離では一般に歩行は無理であろう、自転車が考えられるが最も危険な交通手段であることが分かる、都会などではこの距離でも公共の交通機関(タクシーを除く)利用が可能な場合があるが、乗車前後の歩行距離1kmを含めて試算すると公共交通期間利用は最安全ではなく、乗用車が最も安全なことが分かる。
- 公共の交通機関が最も安全になるのは20km以上の距離を移動する場合のみである。以上の計算では、乗車中の安全なバス・電車の乗車中の死亡事故率はゼロとして考えた。
- このデーターベースでは、自動車乗車中の場合であり運転者だけの値ではない。高齢者の場合同乗の比率が高いので乗用車利用の死亡率はこれより高いとみるべきだろう。
- 日本のデータベースでは交通手段による距離当たり、時間当たりの事故率の統計データが見つからないのでやむを得ずフランスのデータを用いて試算してみた。
この論文では、死亡事故のような稀な現象を詳細な分類に分けて分析する場合、統計ではポアソン分布を適用して結果の信頼度(95%誤差範囲)も合わせて記載している。またこの論文を記載している出版誌は専門的な査読を経て記載されている世界で信頼されているものと私は理解している。
年末が近づくと交通事故のメディア記事が盛んになるが、高齢運転者の正面衝突死亡事故が昨年同期6件であったものが今年9件50%の増加といった統計学の初歩も知らない低次元の記事はフェイクニュースと評価すべきであろう。警察庁の広報でもこのような疑い記事を見たような記憶がある。