高齢者の交通を1960年代(歩行や自転車)に戻そうとするのか 思い込みと迷信に基ずく不合理な常識
65歳以下の人たちには信じられないかもしれないが、1960年(約60年前)日本の道路は国道でも舗装率30%(未舗装=砂利舗装)であった。下のグラフ。まだ乗用車による人の移動は普及していなかった時代である。国道の舗装率が90%を超えたのが1972年頃、県道が1987年である。ちなみに名神・東名高速道全線開通が1968年である。
特定財源により充実した道路投資の半世紀 中里 幸聖 大和総研 2012/9
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これら道路基盤の充実は自然に出来たことではない。日本の道路を一般の人々が乗用車で移動が可能になるまでに社会資本(インフラ)を充実させた世代の現在の年齢層を見てみよう。1972年に生産年齢層であった18歳~60歳の人たちは現在63歳~105歳、1987年では48歳~90歳。現在、高齢者といわれる65歳以上の第一次ベイビーブーマーまでの世代がこれら道路の社会資産を充実させた人々といえる。
これから急増する65歳以上の高齢者の道路交通需要を社会の迷惑のように思っている人たちはこのような事実を考えたことがあるだろうか? わざわざこのような話を持ち出すから年寄りは嫌われると思う人もあるかと思うが、私には自然に沸く感情である。それは1967年30歳代に突然アメリカで生活することになり、乗用車を日常使用していて実感したこと、アメリカの人々の税金で作った道路を無料で当たり前のように使っている私、先人の社会資本投資の恩恵を実感していました。
これから進む第一次団塊の世代の高齢化、この人たちの道路交通需要の増加は自然であり、乗用車移動はこれら道路資本を充実させた世代の権利でもある。道路管理者は、道路標識や信号、道路構造が高齢者に合わないからと言って高齢者の運転を除外するのではなく、高齢者の特性に優しいインフラを研究・設置すべき義務がある。何れ例外なくあなた方も高齢になる。高齢者の交通を1960年代に戻すことではない、この結果起こることは歩行者の事故死者を増やす間違いのない事実だけである。
今世紀に入って、世界の先進国では、高齢者の運転が社会の害悪であるという結論を証明した研究論文を見ることはない。
日本では、いまだに交通行政機関・警察庁と、高齢者の関与した過酷な事故を強調するメディアが作り上げた迷信の時代であるといえよう。