高齢者運転免許更新制度の考察
昨年はテレビ新聞など、高齢者の運転事故を インパクトのあるおぞましい表題をつけたニュースの影響で、高齢者運転が罪悪のような”迷信が”流布された年であった。
日本をはじめ世界の自動車先進国の統計データでは、高齢者の運転が他の年齢層に比べ特に社会に危害を与えるほど大きな存在ではないことは証明されている。
日本や韓国では、欧米の自動車先進国に比べ、高齢者の歩行や自転車の交通事故死者数は自動車利用者のそれより格段に多い。これは、現行では高齢者の運転免許保有者が少なく、生活のための交通が徒歩や自転車に頼っているのが原因している。
特に日本では、運転者10万人当たりの自動車乗用中の事故死死者率は、世界一少ない交通安全のグループである。
警察庁や地方行政は高齢者の公共交通機関利用を奨励しているが、現行の交通機関、バスや電車では、外出目的を達成するためには必ず危険な道路の歩行を伴う。
いかにして道路の歩行や自転車交通者を減らすことが出来るかが、交通死者を減らす最も効果のある方策であることを統計データは示している。
そのための一つの主要な方策は、”高齢者がまだ安全に運転できる間に誤って運転を放棄しないでもよいよう” 社会が保護することである。
以上の纏めは、私が内外のデータベースや論文を読んでの結果を根拠にしたものであり、私の独断ではないと思っている。私がこれまで書いてきたブログの各記事では、内容を検証できる根拠となる論文やデータベースのURLを記載することに努めてきた。
昨年11月立川市の高齢者運転事故をきっかけに各メディアのキャンペーンで急増したと思われる私の下記ブログタイトルの表示数を一例として挙げたい。
昨年11月400表示、メディアが興味本位に作り出す”迷信”に疑問を持つ人たちに参照いただいたのであろうか? 本日までのこのブログタイトルのトータル表示数は1,135回であった。
以下に、2015年1月に書いたこのタイトルの記事を再表示します。
イギリスの高齢者運転免許更新制度と ヨーロッパ各国の状況
ヨーロッパ各国での免許更新手続きと事故状況の研究
イギリスの場合,
運転免許は70歳まで有効で、70歳のとき、もし、病気や怪我で運転免許を持つことが不都合な場合には自己申告する義務を生ずる。
健康が運転に支障がなく、運転免許を中断する恐れがないと自己申告をした場合、3年間有効の免許証を無料で発行される。この手続きは運転をやめるまで3年毎にする必要がある。
運転に支障がある場合の病気の申告は、約24項目ほどの質問にチェックする方式で行われる。それぞれの質問は運転を妨げる特別な状態に相当するもので、DVLAが医学検査を必要と警告する場合のものである。
スウェーデンはほぼ同様の更新システムを持っている。
一方、
ベルギーやフランスは生涯免許を発行している。
研究の結果では、高齢者にゆるい免許更新制度を持つ国は、道路システムを高齢運転者にやさしくする傾向がある。この状況をスウェーデンとフィンランドで比較した研究(Hakamies-Blomqvist et al,1996)、またLangford et al(2004)はオーストラリアのヴィクトリア州と、ニューサウスウェールズ州で同様の結果を得ている。Mitchell(2008)はヨーロッパ連合の国々で比較研究している。
DLVA: Driver and Vehicle Licensing Agency: 《英》自動車運転免許庁
イギリスの結果では、運転免許を放棄する割合は10年毎に75-79歳で5%、80-84歳で5%85歳以上で13%程度(男性)となっている。
90歳で男性は38%が放棄している。
Accident Analysis and Prevention 50(2013)732-741
The licensing and safety of older drivers in Britain. 第2.2節
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22831499
注
イギリスばかりでなく私の知る限り、警察が勝手な理屈(科学的根拠を示さず)で免許証発行制度を起案・強制しているのは日本だけ(民主主義先進国)。運転免許は警察庁の権力拡大や利権のためにあるのではなく、市民のものであり免許証の発行は市民生活の安全サービスである。これは警察とは独立した省庁が取り扱うものではないだろうか。
警察は、交通については違反の摘発や、事故の調査と記録を保全する機関ではないだろうか。