放射線物質の拡散予測 災害避難には予測が不可避であり 被害を受けてからの原因検証では意味がない
「放射能予測 気象庁に任せては」 古川 武彦 氏、元気象庁予報課長
朝日新聞声の欄 7月2日 2016. 名古屋本社
の投稿記事を読んだ。省庁内部にいた人の証言として貴重な重みを持つと考える。
私が最も感銘を受けたのは、
① 東京電力福島第一原子力発電所の炉心溶融(事故という表現ではなく)との表現を使っていること。
② 政府は、SPEEDI(放射性物質の拡散予測)の公表を禁止し、住民避難に使わせなかったこと。
③ 原子力規制員会は、SPEEDIを「正確な予測はできない」として住民避難の判断に使わない方針を決めたこと。
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災害の被害を避けるには予測の段階で避難することであり、予測が正確でないからと云って、結果が出るまで待つのは避難に当たらない。こんなことは誰にでも分かること。
災害予測は、事件が起きてからの刑事裁判の犯罪捜査とは違う。この場合は正確な証拠が必要であり、それがなければ犯罪や責任問題が無かったことになる。当時の政府広報管の弁護士的(法律運用技術者)の習性がふんぷんとする。
当時政府発表データを無批判に報道したメディア、データは平均値で表されていた。この問題点は。
気象条件による放射能拡散には地域的、時間的に大きな変動があり、平均値にしてしまえばその情報は薄まってしまう。これは政権や東京電力にとっては都合がよい。
SPEEDIの情報は、それをリアルタイムで知る唯一の方法であったにもかかわらず、その結果の放射能の強度の絶対値の欠落が、東京電力が放射性物質の原子炉からの放出データを隠して発表しなかったのが原因であった。にもかかわらず、政府は東京電力にデータの提出を命令せず、不正確としてSPEEDIの公表を禁止したばかりかそのシステムの運用経費まで停止し、不都合なデータの漏れるのを恐れ放棄した。
上のの地図はSPEEDIの結果である。
http://www.nsc.go.jp/info/110323_top_siryo.pdf このサイトはアクセスできません。
内閣府 平成23年3月23日 原子力安全委員
私のブログ記事 「SPEEDI の結果とモニタリングデータとの比較」 2011/03/30
平均値には、行政区域など地域的なものと、同一地点での時間的な平均とあり、放射能被害ではそれぞれその意味合いが違う。
いずれにしても、放射能傷害は、個人が受けた身体内外の合計放射線被爆量であり、また放射性核種の違いである。放射能の平均値ではない。
放射能被害は目に見えないので、後から何とでも言い訳ができ、責任の決着がつかないとの弁護士的行政は見え見えであった。