日本では 高齢運転免許保有者増の結果 交通事故死亡件数は減少した
「交通事故の20年」竹本 崇, 交通事故総合分析センター 平成27年3月発表の論文より
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この論文は、交通死傷事故数に対する各種要因の重回帰分析手法にによる統計分析の結果の報告で、いくつかの説明モデルを構築して、説明変数(代理変数等)を用いて今後(2025年)までの予測死亡件数を推定することを目的としたものである。
ここでは、別の視点から、この論文で用いられたデータ(付録③ 死亡事故件数説明モデルの検証結果一覧表のデータを用いてグラフ化してみた。
以下の分析では、2000年より2012年までの各種データが年変動をしていることを利用たものであり、時系列の変動要因の効果は無視したものである。
下のグラフは、実測データによる相関図で、2000年から2012年までの高齢者の人口比と死亡事故件数との相関を示したものであり、理由はともあれ社会的事実である。
高齢者増に伴って交通事故が激増しているという事実は全くなく「嘘」であることが分かる。
この論文では、死亡事故件数の原因を説明するための効果的な変数とそれを組み合わせたいくつかのモデルについて予測値(数式による近似値)を用いて事故原因を分析している。
私は、この論文のモデル式に用いられた説明変数実測値を参照して高齢者人口増に対する死亡件数の実測値を調べてみた。
下のグラフは、この論文で用いられた説明変数の実測値の年次変化を2000年の値を基準にして指数化し描いたものである。
これで分かることは、高齢者人口増だけが例外で他の変数はほぼ並行してわずかに年次減少を示している。
高齢者人口増が全体の死亡事故件数の減少に対し、何が原因しているかを見るために、2000年からの12年間の高齢者人口増と、運転免許を持っていない人口数との関係を調べてみた。運転免許保持者が高齢化していくに従い日本全体の免許の非保有率が減少しているという単純な事実が分かる。
運転免許保有率が高まる効果が交通事故死亡件数を減らしているのでは?
これを確かめるために、説明変数の運転免許 非保有者率に対する死亡事故件数の関係をフラフにしたものが下図である。
明らかに強い正の相関を示している。
これは何かの間違い、常識では承服できなという疑問を持つ人も多いと思う。
この疑問を解くための説明変数として、走行台キロメートルを見てみると、高齢人口比が増加するにしたがい、社会全体の平均で見ると車一台当たりの走行距離が短くなっていることが分かる。
これは、高齢者は生活のため、または社会活動や生活の質を保ち、通院など保健上の必要から運転しているのであって、年間運転距離が少なく、夜間、天候の悪い危険な状況での運転を避けているためといえる。
日本の交通の現状を時系列で見ると、高齢者人口の増加とともに運転免許保持者が増加し平均の一人当たりの運転距離が減少していることが、結果として死傷事故率の減少になっていると解釈されよう。
残念なことに、
日本では、自動車先進国中際立って歩行者事故死者率が高い重大な事故原因にもかかわらず無視されていることである。
この論文に関するわたくしの最大の疑問は、歩行者数(自転車利用者数)がなぜ説明変数として採用されていないかということである。
一方、交通法令違反が取り上げられているが、これは根拠が非科学的で合理性を欠いていると思う。
以上の話とは別だが、社会的現象として以下のような現実がある。
これは高齢化が進むに従い世帯当たりの人数が減る、言い換えれば若い同居家族の交通支援が得られない、高齢者自身での移動が必要である割合が増えていることである。
これらの人たちにとって、自動車運転は最も安全な移動手段でることに注目すべきである。
一般道路での高齢者の歩行や(自転車利用)を必要としない社会構造を構築することが日本の死亡交通事故を減少させることに不可欠と思う。
いずれにしても、交通事故のデータを収集している警察庁が、このような事実を知らないはずはなく、高齢者増やそれに伴う歩行者(自転車利用者)増を無視し、高齢者の交通事故死者数だけを取り上げて「激増」と発表し、これと無関係な高齢運転自体が罪悪のように見せかける広報をしている根拠が分からない。
付録③ 参照したデータ