自賠責保険の支払保険金年次上昇推移の疑問点
下のグラフは、自賠責保険審議会の資料から死亡と障害の保険金支払件数の年次推移を描いたものである。
2007年以前と2008年以後で不連続に変化しているのは、2008年からJA共済のデータがこの資料に含まれたことによる変化と見られる。
2008年以前の支払死亡件数が警察庁の統計より低いのはJAの支払件数が入っていいないせいかもしれないが、当時のJAデータがないので検証出来ない。
2008年以降は警察庁の死亡件数と一致して推移しているので一見正しいようにみられるが、自賠責では自損事故は支払の対象になっていないが警察庁の事故数には自損事故も含まれている。警察庁のデータベースでは、自損事故と被災事故と分けて公表されていないのでわからないが、当然死亡事故の自賠責支払件数は、警察庁事故件数より少なくならなければならないはずである。
2008年以降の障害に対する支払件数の上昇トレンドは何に原因するのであろうか? 医師会委員の指摘しているように、医業類似行為に患者が流れ施術期間が長くなっている結果であろうか。医師会側の主張では、症状固定システムにより賠責保証分の平均医療費は16万円程度で年次増加はない。それに対し医療類似行為に対する支出は32万円程度でありそれが支払い増の原因と云う。
しかし、賠責保険の傷害事故に関する平均支払金額は2003年以降変わっていないことを見ると施術機関が長くなったせいではなく、傷害に対する支払件数が増加したためとみられる。
自動車自体の乗員の死亡事故を防ぐエアバッグなど安全装備の装着が進歩し、同一規模の事故に対し死亡件数が減少し、それが障害件数の増加につながるという医師会側の指摘は事実であろうが、警察庁のデータではその効果が現れていない。しかしながら、障害に対する自賠責支払件数は警察庁障害事故件数に比べて上昇トレンドを示している。
自賠責保険料はユーザーにとって大きな負担を強いられている国家が決める一種の税金であり、その適正額を審査する審議会は、事実に基づいた検証可能なデータベースを公表した上で初めてその説明責任が果たせるのではないだろうか。
議事録・質問・応答記録を見る限り、審議委員は、金融庁の損害保険算出機構の作成した要約の資料(公表される)をその場で配布され、委員長は、2,3の質疑応答を促し、数人の委員の質問に事務局の回答が終わったところで結論を諮り、時間内(他の5つほどの議題を含め)2時間程度で「異議なし賛同」を得ることを目的に、滞りなく進める儀式の感が強い。
以上が私がここ数日調べた結果の感想である。