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公共交通機関の整備だけで交通事故の死者を減らせるか? Pedestrian Safety,Uban Space and Health OECD/ITF2011 のデータベースより

2013/05/18

http://www.oecd-ilibrary.org/transport/pedestrian-safety-urban-space-and-health_9789282103654-en

http://www.internationaltransportforum.org/Pub/pdf/11PedestrianSum.pdf

日本の歩行者交通事故死者の全交通事故死者との比率は下のグラフのように、データーのあるOECD加盟26ヶ国中25位というひどい結果である。第1図

歩行者事故死の国際比較グラフ

一方、全交通事故死者の人口比は、下のグラフに見るように、日本は、ヨーロッパの最も事故率の低い国々と同等である。言い換えれば日本の自動車運転者は世界で最も安全な運転者であるといえる。第2図

IRTAD2010交通死者統計グラフ

どうしてこんな一見矛盾とも思える結果になっているのか。その理由を考えてみた。

そこで、全交通に対する歩行者の割合と歩行距離を調べたのが下のグラフである。この種のデータを正確に定義するシステムは確立しておらず、基準や算出年度もまちまちである、残念ながら日本のデータは公表されていない。第3図

歩行者比率と歩行距離グラフ

この結果を用いて、歩行者の割合と死亡率との関係をグラフにしたものが次のグラフである。これを見ると、国の事情や調査年度が異なるのにかかわらず、歩行者の割合が多いほど死者の割合も増加することがかなり良い相関で見られる。当たり前だといえばそれまでだが、このことからは、歩行者事故は国や地域の道路事情にあまり関係していないように見える。第4図 

歩行者の割合と事故死者

歩行距離と事故死者の割合の関係を見てみると、相関はあまりよくなく、数百メートルから2kmまでの歩行距離にかかわらず事故死の割合は歩行者の全死者率(第一図)と同程度であるといえる。すなわち、歩行距離に関係なく短距離の道路歩行でも危険であることがわかる。第5図

歩行距離と事故死者

公共交通機関を利用する場合に必要な公道の平均歩行距離のデータとしてノールウェーの例を見ることができる。第6図

交通機関を利用するための歩行距離グラフ

これは、各交通機関を利用するためにどれだけの距離の歩行が必要かを統計したものである。最初の二つ、自転車と自分の車は公道の歩行はないとみると、ノールウェーでは、公共の交通機関を利用する人は、平均400mから800mの公道での歩行が必要であることがわかり、第5図のグラフで見るとこの歩行距離だけで全歩行死者率の80%程度を下らない。

このフォーラム報告では、世界のどの国の道路交通事故の原因研究においても、歩行者の事故原因の究明と道路環境との関係が抜けていたことを指摘している。また、道路管理の悪さから歩行者の転倒など、特に高齢者の死亡につながる障害事故の統計や、道路管理者の責任に関する研究も重要であることを提言している。

なお、第1図から、日本の歩行者の事故死率を35%とし、第4図で求めた直線近似式で外挿すると、歩行者の割合は56%程度と推定され、都会での歩行者率としてそれほど不自然ではないようにおおもわれる。

結論として、日本の歩行者死亡率がヨーロッパの車交通先進国の3倍近く多いのは、公共交通機関の利用が多くそれに伴い道路歩行が多いいことにあるといえないだろうか。

公共交通機関そのものは安全であり、省エネ、温暖化ガスの放出が少ないなど、非常に良い交通機関であるが、個人の移動目的を満たす総合的な交通の安全性を考えると、個人で運転する車による移動が最も安全であるといえる。このことを、公共の交通機関が発達している日本の統計が示しているといえよう。

「日本の交通死者の3分の一以上が歩行者であり、その上およそ半分は65歳以上の高齢者である。その理由として高齢化社会でありながら、65歳以上の高齢者は40%ほどしか運転免許を持たず歩行(自転車)が多いことにある」。これはOECD/internationaltransportforum 2011の日本の報告書のサーマリーの一節である。

歩行者事故を運転者だけの責任として犯罪性を摘発するだけでは日本のこの状況は変わらない。ここにきて、公共の交通機関の利用を進めるためには、人と車の共用道路について、科学的な安全管理の研究と管理者の責任の追求が急務であることをこのデータは示している。

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