新聞社の無責任な報道 ここでも がん生存率
が発表され、23日の新聞などメディアも取り上げていた。このデータベースは誤解による勝手な利用をしないためにデータを見るには先ず「コメントを読む」ことを各所で義務付けされている。それほど正しく理解するには難しいデータベースである。
このデータを用いて、胃がんと肺がんについて、各施設の相対生存率に差異があるかどうかを可視化するための方法として下の様なグラフを描いてみた。
Ⅱ期生存率のエラーバーは煩雑になるため省略した。
Ⅱ期生存率は省略、Ⅲ期生存率のエラーバーは省略した。
ここで用いている”相対生存率は”各施設で実測した生存率を、対象者と同じ性・年齢分布を持つ日本人の期待生存率で割ったものであり、異なった地域・性格の医療機関固有の特性を取り除くよう配慮した指標である。エラーバーは各施設での症例数等が異なるのを考慮して信頼度を統計的に推定したもので、データ表の標準偏差から推定した95%信頼度を表したものである。このエラーバーが重なるデータ間では差異に言及することは出来ないことを表す。
上の二つのグラフで見ると、全加盟施設のデータで求めた相対生存率を表す横線に殆どの施設の相対生存率のエラ-バーが重なっている。このことは、数値表だけを見ていれば施設毎に生存率に違いがあるように見えるが統計的には差異は認められないことが分かる。
細かく見ると、個々のエラーバーからは統計的に優位性のあるものが見られるが、同一施設でⅠ期からⅣ期までのデータ全てが、他の施設より優劣を示している例は見当たらない。
言い換えれば、このデータベースで見る限り、リストされた国公立専門治療機関のがん治療効果の差異は無いと見るべきであろう。
公表者が恐れたとおり、毎日新聞の記事見出しは 「がん生存率 治療開始後5年、最大33ポイント差 国公立28専門病院」 といったあたかも病院間の治療効果の優劣があるかの印象を与える見出しで読者の目を引こうとしている。マスメディアの編集者の科学的理解力の欠如がここでも見られる。
見出しこそセンセーショナルでないが、公表されたデータテーブルを無責任にコピーしただけの報道をしていたのは朝日新聞、共同通信も同様である。
下の例は、新聞報道のデータから描いた全がん協病院のがん患者5年生存率グラフである。
これでは各医療施設に優劣があるように見える。毎日新聞の見出し「・・・・33ポイントの差」は四国がんセンターと群馬県立がんセンターとの差を云っているのだろうか? がん協の恐れたこの種の間違いを助長したものと云えよう。誤解を生じないために各施設での症例数や、Ⅰ期/Ⅳ期比を同時にリストし報道していると云いたいだろうが、メディアの編集者でも誤るような判断の難しいデータをただコピーするだけ、判断は読者にまる投げの記事はメディアの使命を放棄した無責任記事と云われても言い過ぎではないだろう。
なお、ここで用いた各用語はこの記事の最初に挙げたウェブ 全がん協加盟施設の生存率協同調査 / 施設別生存率 に詳しく解説している。