東京電力福島第一原発災害による汚染地の年間積算線量 今回の文科省の発表値と、災害発生以来何回か行なった私の積算量推定値との比較
文科省のデータベースに「実測値に基づく各地点の生産線量の推計値」として2011年3月12日から2012年3月11日までの1年間の積算線量の推計値が発表された。実測による積算線量と題されているが各地における空間線量値の積算ではなく、屋外8時間滞在、屋内16時間滞在としての軽減率0.6が掛けられている値で、実測とは言えない紛らわしいデータである。http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1750/2012/01/1750_011718.pdf
以下文科省の積算値に0.6の逆数である1.67倍にして、真の積算量に換算して話を勧めることとする。
これによると、30km圏外(計画的避難区域)でも政府の安全制限20ミリシーベルトはおろか150ミリシーベルト(双葉郡浪江町赤字木手七郎)の地点があることが分かる。計画避難区域と緊急時避難準備区域 相変わらず言葉選びに終始し時期を失した安全施策 «
私が文科省発表のモニタリングデータを用いて積算線量を推定し、最初のブログに書いたのは、2011年3月30日です。
福島第一原子力発電所付近の空間放射線量率の分布と減衰予測の試算 « 3月30日
SPEEDI の結果とモニタリングデータとの比較 « 4月5日
福島県浪江町の観測値について原子力安全委員会の不可解な被曝線量の計算発表 « 4月7日
この時点で私の計算値では、浪江町津島付近の3地点の積算線量はすでに 37~51 ミリシーベルトとなった。
その方法は、文科省のデータベース、3月17日から28日までの11日間の空間線量率から、日経過による対数減衰率を算出し、データの発表が無かった3月15日に遡り放射線率の推定値を算出し、3月15日を起点として3月30日までの(15日間)積算量を計算したものである。その結果は、SPEEDIや米軍の航空測定ですでに分かっていた高汚染地域、原発から北西の地点の測定点では、距離20-29km圏内にある測定点で 11~62ミリシーベルト、30-39km地点で 6~48ミリシーベルトとなった。15日間ですでに20mSvは超えている。
4月12日、浪江町、飯館村の高汚染地でのデータから4月11日まで(1ヶ月)の積算量を推定した結果は 17~45mSvとなった。
浪江町の累積放射線量 災害発生時から一年間で20ミリシーベルトの推測 どんな根拠の計算から出るのだろうか? «
5月1日に、高汚染地域の8地点について年間の積算線量の推定を行ってみた。結果はこの時期でではまだ減衰率が大きかったのでその値で推定した年間積算量は最高地点(浪江町)でも56mSv~73mSvと今から見れば少なめの結果となった。
文部科学省の英文データベースを用いた高汚染地域の総被ばく量の試算 « 6月19日
線量減衰率がかなり落ち着いてきた6月19日までの値を用いた年間積算量の試算値では、浪江町赤字木で 191mSv、飯館村長泥で 133mSv と大きな値となった、これは日の経過とともに空間線量の減衰率が減少しているためである。
福島県の高放射線域の半減期は2年か 過渡的な放射線量減衰期は終わり定常的な減衰期になったようだ « 6月14日
非科学的な文科省の放射線量積算データ 原子力安全委員会の資料を参考に修正を試みた « 6月19日
文科省の各観測地点での空間線量率の公表が中止された8月7日までの線量率データベースから、私が行った減衰関数近似から求めた年間積算線量値と、今回発表になった文科省の「実測値に基づく各地点の積算線量の推計値」の表から高汚染地点の数点にについて比較してみた。
福島県20km圏外の高線量地域の空間線量率減衰特性 « 8月19日
主な高線量地点の年間空間線量の積算量比較(単位:ミリシーベルト)
| 地点番号 | 地点の住所 | 文科省推計値X1.67倍 | 私の関数積分値(8月19日の分析による) |
| 31 | 双葉郡浪江町下対馬中沖 | 64 | 48~64 |
| 32 | 双葉郡浪江町赤字木手七郎 | 147 | 112~146 |
| 33 | 相馬郡飯館村長泥 | 78 | 66~86 |
| 34 | 双葉郡浪江町津島大高木 | 31 | 24~30 |
| 79 | 双葉郡浪江町下津島深 | 69 | 54~72 |
結果は嘘のように良く合っている。信じられないと云われるかもしれないが、私の積算値は8月11日までの文科省のデータベースに基づく統計分析による近似式の積分量である。
文科省は実測値に基づく値であることを強調したいようであるが、被害者にとって一年後の後出しの実測値にどれだけの意味があるか。被害者にとって重要な情報は、災害の進行中における明日の予測である。
自然科学者の仕事は、は過去のデータの蓄積ではなく、現在までのデータから将来進行するであろう現象を理論的に予測する能力である。
原発危機に直面したこの一年、放射能災害の日本政府の唯一の窓口である文科省は、実測データ以外の科学的分析を一切排除した非科学的な発表のみに徹していた。その原因は、証拠がなければ無かったことと等しくなる”弁護士的権力”に汚染された科学音痴の管理職のせいだと云っても言い過ぎではないように思う。
自然科学者も、それを取り上げるべきマスメディアもみな沈黙をしていたこの1年、日本の権力統制の暗部を感じざるを得ない。これは一老人のたわごとであろうか。
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